現在、持続可能な社会の実現のために世界各国で様々な政策が行われており、日本でも国を挙げた取り組みが進められています。
政府が特に力を入れているのが、環境保護と経済成長の両立を目指すGX(グリーントランスフォーメーション)です。
そしてその、GX推進に欠かせないカギとなるのが、デジタル技術の活用と変革を意味するDX(デジタルトランスフォーメーション)です。
一見、相反するようにも思えるGXとDXですが、これら二つには深い関連性があります。
この記事では、GXとDXについて、次のことを詳しく解説していきます。
・GXの目的や取り組み
・DXの目的や取り組み
・GXとDXの関連性
・SXとは
GXとDXの意味や具体的な取り組み、二つの関連性、それに加えて最近話題のSXについても理解できる内容になっています。
GX(グリーントランスフォーメーション)とは?
GXはGreen Transformation(グリーントランスフォーメーション)の略称です。
経済産業省により、GXは以下のように定義されています。
“2050年カーボンニュートラルや、2030年の国としての温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた取組を経済の成長の機会と捉え、排出削減と産業競争力の向上の実現に向けた、経済社会システム全体の変革”
※GXリーグ基本構想より(経済産業省より2024年1月15日参照)
簡単にいうと、GXとは「カーボンニュートラル実現への取り組みを通して、経済社会の変革を行い、経済成長を目指すこと」です。
深刻化する地球温暖化を受け、世界の各国が温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指す「カーボンニュートラル」へと舵を切りました。
日本でも、2020年に当時の菅内閣が2050年までにカーボンニュートラルを実現させることを表明しています。
現在では岸田内閣によって様々な取り組みが行われており、政府だけでなく多くの企業もGX推進に賛同し、新しい事業の展開などにもつながっています。
地球環境保護はもちろん、経済発展の足掛かりとしても、GXは重要な役割を担っているのです。
GXの目的
経済産業省によるとGXの目的としては、主に次の3点が挙げられます。
・脱炭素
・経済成長
・エネルギー安定供給
環境保護のための脱炭素は、最優先の目的といえるでしょう。
そのための新しい技術開発などによる経済成長も、欠かせません。
国としては環境保護を実現させると同時に、各国と渡り合う産業競争力を向上させることを目指しています。
その二点に加え、エネルギーの安定供給も、GXの重要な目的です。
ロシアによるウクライナ侵攻以降、ロシアへの経済制裁の影響でエネルギー価格の高騰が続いています。
現在の化石燃料を中心としたエネルギー供給は、このような外的要因によって価格の変動が大きく、安定した供給量や価格を維持することが困難な状況です。
そのため、再生可能エネルギーを中心にGXに取り組むことでエネルギー自給率の向上を図り、国民生活及び経済活動の基盤となるエネルギーの安定供給を目指しています。
GXの取り組み
政府がGX実現に向けて行っている取り組みとして代表的なものが、次の二つです。
・GX実行会議
・GXリーグ
それぞれ、どのような取り組みが行われているのかを確認しておきましょう。
GX実行会議
GX実行会議(内閣官房より2024年1月15日参照)は、GXの実現のために必要な施策や課題について検討を行う会議です。
2022年7月に第1回GX実行会議が開催され、2023年12月中旬現在で全9回のGX実行会議が行われました。
国を挙げたGX推進には、政府・民間・学会、つまり産官学の協働が不可欠です。
GX会議は、岸田文雄内閣総理大臣を議長に置き、経済産業大臣や内閣官房副長官などの関係省庁の大臣と、各企業の代表や専門家などの有識者によって構成されています。
政府としての施策や企業が行っている取り組み、専門家による知見など、様々な角度からGX実現に向けた議論が交わされています。
2022年12月に開催された第5回GX実行会議では、今後10年を見据えGXの実現を目指したロードマップが示されました。(内閣官房より2024年1月15日参照)
自動車産業や蓄電池産業、再生可能エネルギーなど、様々な分野における今後の見通しや具体的な目標が掲げられています。
GXリーグ
GXリーグ(GXリーグ公式ウェブサイトより2024年1月15日参照)は経済産業省によって発足されたもので、GXに積極的に取り組む民間企業が官公庁や学術機関と協働するための場です。
2023年度から活動を開始しており、2023年6月末時点で566社の企業が参画しています。
GXリーグは、2050年のあるべき社会をリードしていく未来企業の集合体となるべく、参画企業の発展と市場の活性化を目指しています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
DXは、Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略称です。
日本でDXというワードが浸透し始めたのはここ数年ですが、初めて提唱されたのは2004年で、スウェーデンのウメオ大学(当時)のエリック・ストルターマン教授によるものでした。
本来は「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という社会的な概念でしたが、ビジネス界の急速なデジタル化にともない、現在はビジネス用語として認知されています。
経済産業省におけるDXの定義は、以下の通りです。
“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”
※DX推進ガイドラインより(現「デジタルガバナンス・コード2.0」 経済産業省より2024年1月15日参照)
まとめて説明すると、DXとは「デジタル技術を活用して、製品やビジネスモデル、組織などのシステムを変えていくこと」を意味しています。
DXの目的
DXの目的は、人々の生活をより良い方向に変えていくことです。
その手段は、デジタル技術の活用です。
意味合いが似た「IT化」というワードがDXより先に世間に浸透しており、混同されがちですが、単に作業が効率化するだけのIT化に対して、DXはそこから業務形態や組織などが変わることまでを指します。
例えば、在庫管理や会計処理などを手作業で行っていた商店がPCを導入し、管理ソフトの活用で作業の手間が省かれるのはIT化です。
それだけでなく、オンラインショップを開設し、新しい販売形態の開拓やオンライン担当部署の立ち上げなどを行い、デジタル技術を活用することで旧来の事業から革新的な変革を行うのがDXです。
この場合、商店はDXに取り組むことで、次のような変化(トランスフォーメーション)を得ました。
・作業の効率化による労働環境の改善
・事業の拡大
・新しい業務形態による組織の再構築
GXにも共通する「トランスフォーメーション」は変形や変容という意味をもちます。
DXは組織や業務形態、社会システムなど、私たちの生活スタイルをデジタル技術を活用してより良い形へ変えていくことを目的としているのです。
DXの取り組み
DX推進のため、政府が行っている取り組みをいくつかご紹介します。
・DX推進ガイドライン(デジタルガバナンス・コード2.0)
・DX認定制度
・自治体DXの推進
DX推進ガイドラインは、経済産業省が2018年に公表したもので、企業がDXを推進する際に実施すべき事柄や指針を取りまとめたものです。
現在は、コロナ禍による情勢の変化なども考慮されたうえで改訂が加えられ、「デジタルガバナンス・コード2.0」と改められています。
この基本的事項を満たす企業を国が認定する、DX認定制度も始まっており、2023年10月現在で既に822社が認定されています。
また、企業だけでなく自治体のDX推進にも力を入れており、例えばマイナンバーカード普及もDX施策のひとつといえるでしょう。
その他にも、DXに関する設備投資や事業費を支援する補助金や助成金など、様々な取り組みが行われています。
GXとDXの関連性について
環境保護を想起させるGXと、デジタル化の意味合いが強いDXは、一見すると相反するようにも思えます。
実際に、それぞれのワードが多用される分野は異なる場合が多いでしょう。
しかし、GXとDXはどちらも“社会や生活をより良い形に変えていく”という共通項があり、持続可能な未来を構築するために密接に関連しています。
特に、GX実現にはデジタルの力、DXが必要不可欠です。
GX実現には二酸化炭素をはじめとする温室効果ガス削減が急務であり、そのために省エネ対策をはじめとする様々な取り組みが求められています。
これらの実践には、DXによる業務の効率化やデータ分析、技術の発展が欠かせません。
GX実現のための比較的分かりやすい直接的で具体的な課題の例を、いくつか挙げてみます。
・エネルギー利用量の削減
・資源の節約
・再生可能エネルギー導入
エネルギー利用量の削減は、テレワークの導入やIoT、AIなどの技術を活用した自動化、省人化によって大きな効果を得ることができます。
社員の移動や配置を減らすことにより、移動に必要な燃料の節約、工場やオフィスの小規模化による省電力化などが期待できるでしょう。
資源の節約はエネルギー利用量の削減と共通する部分も多いですが、それに加えてデジタル技術によるペーパーレス化なども、DXの成果のひとつです。
GXの要となる再生可能エネルギー中心の社会システムへの移行は、DXなくては実現しません。
電気自動車の開発にデジタル技術が不可欠であったように、GXを促進する新しい技術や製品はDXから生み出されているのです。
さらに、AIによるデータ分析に基づいて需要予測を行うことで、再生可能エネルギーの導入を最適化することなども可能になります。
デジタルの力を活用することで、企業は環境への配慮と成長の両立が可能となり、脱炭素社会の実現が近付くのです。
つまり、DXはGX実現の手段のひとつとして欠かせない要素といえます。
また、DXを推進するうえでもGXは重要なポイントです。
この100年の産業の活性化は、地球環境に大きな影響を与えています。
今後の経済発展にも必要不可欠なDXにGXの理念を取り入れることで、DXがより環境に優しい形で実施される可能性が高まります。
GXとDXが目指す未来のためには、それぞれの概念を反映させた実践が重要です。
GXとSX
最近少し目にすることもあるかもしれませんが、SXとはSustainability Transformation(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を示す新しい用語です。
これまでの説明にあったように、DXはデジタル、GXはグリーンですからSXは、サステイナビリティ、つまり「持続可能な状態」へのトランスフォーメーションということになります。
GXのスコープが、どちらかというと環境負荷低減やカーボンニュートラル、脱炭素といったエネルギーに寄った概念だとしたときに、SXは、環境負荷低減(Ecology)だけでなく社会(Social)やガバナンス(Governance)といったESGといわれる概念を包括しているイメージです。
企業が今後中長期的に持続していくために必要となる要素としてESGが重要視されるようになり、単に温暖化の対策だけでなく近隣住民から投資家までありとあらゆるステークホルダーとの関係を十分に考慮しながら企業経営を行っていくことが求められています。
まとめ
この記事ではGXとDX、さらにはSXまで、それぞれの意味と関連性について解説しました。
GXは環境保護の観点から、DXはデジタル技術とともに、カーボンニュートラルや脱炭素の実現を目指しています。また、SXは環境やデジタルを超えた社会やガバナンスというESGの概念で持続可能性を目指すものです。
それぞれどれを重視するというわけではなく、より良い未来を構築するためには、お互いに必要不可欠な概念ということが分かります。
GXとDX、SXは、現在の社会課題の解決につながる重要な取り組みです。
それぞれが相互に補完し合い、バランスよく相乗効果を発揮していくことが持続可能な社会の実現につながると考えられます。
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