積極的なカーボンニュートラルへの対応が必要
企業が自社のカーボンニュートラルを考えるとき、何のために?何から?どのように進めればいいのか?・・・多くの企業が、その目的や方法がよくわからないので取り組めていないのが大半の理由になっているとみられます。さらに先ずはカーボンニュートラルとは何のことなのかの理解から必要になります。
二酸化炭素(CO2)の排出量を減らして、同時に削減量を同じ量まで増やしてプラスマイナスゼロにすることがカーボンニュートラルの意味となります。即ちCO2の新たな増加をゼロにすることが目的です。企業の事業活動全般において新たなGHG(温室効果ガス)排出量をゼロにすることが求められているということになります。そして、そのためにはどのような対策を取らないといけないのか考える必要があるのです。
コラム:GX(グリーントランスフォーメーション)とは?わかりやすく解説
「脱炭素計画」の立て方は決まっている
実際に企業のカーボンニュートラルを実現する基本的な方法、手順は決まっています。その方法は環境省の企業向けハンドブック※にも説明されており、ここでは中小企業がそれを実践することが期待されているものですが、その方法は中小企業だけでなくとも一般的な企業であれば十分にあてはまるものです。どちらかというと、脱炭素計画を実現するための手法としての補助金などの支援策が、中小企業向け、ということになっています。
「脱炭素計画」とはすなわち、石油・ガスなどの二酸化炭素を排出する「化石燃料」と言われる燃料を使わないようにして、「省エネ・節電」でエネルギーの使用量を減らし、太陽光発電などの「再生可能エネルギー」に変えることが基本的な方法になります。
※「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック」(環境省:2021年)
6ステップの「脱炭素計画」の進め方
今回からのコラムでは、企業がカーボンニュートラルを実現するための「脱炭素計画」の立て方について説明を進めていきたいと思います。
企業のカーボンニュートラル実現のためには大きく6ステップの実行計画が必要になります。
それは以下のような6ステップです。
- 【ステップ1】教育・研修・人材育成
- 【ステップ2】排出量算出・見える化
- 【ステップ3】燃料転換・電動化
- 【ステップ4】省エネ・節電推進
- 【ステップ5】再エネ電力導入
- 【ステップ6】制度活用・認証取得
上記の6つのステップについて計画を立てて、順次実践することにより企業のカーボンニュートラルを実現することができ、結果として企業経営におけるさまざまなメリットをもたらし、業績拡大や企業価値を高めることにつながります。
これから6回にわたって、各ステップごとにその「目的」「方法」「成果」について話を進めていきます。
まず今回は「教育・研修・人材育成」からスタートです。
【第1ステップ】教育・研修・人材育成計画
計画の第1ステップは関連知識・情報力を高める教育・研修・人材育成計画から始まります。
そしてその計画には重要な3つの目的があります。
3つの目的
目的① トップの決断と社員全員の理解のため
脱炭素計画は企業本来の事業とは異なる対応や設備導入などの対策が必要になることがあり、その直接的な経費もかかることで、なかなか積極的に取り組むことが厳しいテーマと考えられています。社会的に温暖化対策が必要なことは理解していても、自社が取り組むことについてはなかなか取り掛かれないものになっているのが現状ではないでしょうか。そのため計画の実行には十分な検討・評価によるトップマネジメント(経営層)の決断がなければ始まりません。同時に、全社員がトップの決断を理解し共有できることが重要になります。どんな取り組みでも社員のモチベーションが上がらないと確実な実行と効果的なアイデアも生まれてきません。
目的② 「脱炭素計画」を成功させるため
2番目の目的は「脱炭素計画」成功のためです。カーボンニュートラルを実現するためには6ステップの計画を立てて実践していくことが必要になります。そのためには二酸化炭素排出実態の把握をはじめとして、化石燃料削減の方法、省エネ・節電の方法、再生可能エネルギーの種類などの多様な知識や情報が必要になります。そうした知識や情報がないと有効で実行可能な計画を立てることはできません。低・脱炭素やカーボンニュートラルなどに関する知識と情報が計画成功の必要条件になるのです。
目的③ 脱炭素計画実践人材を育成するため
もう一つの目的は、高度・専門的な知識や情報を身につけた専任スタッフを育成し、自社の計画実践をリードしていくということです。「脱炭素計画」の実行は、自社の社員にゆだねられています。まずは、GXやカーボンニュートラルといった環境価値実現を推進していく人材を育成することこそが「脱炭素計画」推進の第一歩ということになります。
以上のように目的を明確にして教育・研修・人材育成を進めて行くことが求められます。
次に具体的にどのような方法で教育・研修・人材育成を進めて行くのかを見ていきましょう。
3つの方法
方法① WEB等の公開情報収集
今日のさまざまな情報収集はネット活用で基本的な収集は可能になっています。特に環境・エネルギー関連は多くの情報を収集・確認することができます。まず基本的な情報収集としてはテレビ・新聞などのメディア情報からインターネット検索などで確認することは十分可能となっています。さらに興味に応じて専門的な分野の情報も確認が可能となっています。特に、行政情報などはデータやツールが広く共有されていますので、情報収集・学習としてこうしたオープンな情報収集から始めることになります。
方法② 専門セミナー・eラーニングなどで企業研修
インターネット上の情報収集の次に、企業の対応として経営者や社員が外部の専門セミナーを受講したり、社員教育・研修として導入が進んでいるeラーニング(ネットによる個別講義形式)受講を進めたりすることで、一歩進んだ専門的な教育・研修を実現することが必要になります。国・自治体・公的支援機関や業界団体コンサルティング企業などで様々なセミナーやeラーニング教材が提供されています。経営者、専任担当者、一般社員の本格研修として重要な役割を担っていくことになります。
方法③ アドバイザー/支援機関・企業によるサポート
セミナーやeラーニングなどによりある程度の専門的な知識や情報を身に付けられますが、これを実践することは中々困難な場合が多いです。より具体的な計画を立てる時には専門アドバイザーによる伴走支援(協働して計画推進)が有効・必要になってきます。さらに、国・自治体や専門機関による専門家の派遣支援により現状分析から具体的計画作成・実行を支援してくれるような支援制度もあります。公的な支援政策のため補助金の活用によりコストを抑えて利用することができます。さらに最近では計画作成から具体的な実行までトータルで支援するサービス企業が多く参入してきておりすべてを任せることができるようになっています。
具体的な計画作成は今後順次公開する5つのステップで詳細を説明していきます。
最後に教育・研修・人材育成ステップにより得られる成果について確認してみましょう。
3つの成果
成果① 脱炭素経営へのコミットメント
最初の目的で説明しましたが、計画を作成・実行するためにはトップマネジメント(経営幹部)の決断と社員の理解が必要です。なぜカーボンニュートラルを企業経営に取り入れないといけないのか、なぜ現場で実践しなければいけないのかを理解するためには、背景となる温暖化による課題の発生状況からその対策方法などの広い知識・情報を知る必要があります。先ず最初にこうした教育・研修を受けることで経営層が決断し社員が理解することができます。トップマネジメントが積極的に情報収集をし、率先してカーボンニュートラルへの取り組みを推進することこそが、脱炭素経営へ第一歩となるのですが、それを促すが教育・研修・人材育成ステップといえるのです。
成果② 計画実現のための社員の理解・モチベーション向上
経営幹部が理解して実行の意思決定・決断・コミットメントを行っても、それを社員・現場が理解しなければうまくいきません。特に脱炭素計画の実践にあたっては、トップマネジメントと現場のコミュニケーションが重要になります。そしてその際に計画・実行する目的やメリットをしっかり説明でき共有できることが必須条件です。社員のやる気・モチベーションを高めることはすべての活動において共通することであり、特に省エネルギーや環境負荷低減という負のイメージがある計画に対しては、より強力な理解が必要になります。事前の社員教育・研修において全社一体となった理解によりモチベーションを高めることが期待できます。
成果③ 専任スタッフの育成で文化醸成
第3の成果として期待されることは、社内のカーボンニュートラルをしっかり成功させるためには社内での推進役となる専任担当者の育成が必要となります。結果として、その専任担当者は計画作成から実践までの計画・管理ができるプロになることができます。本格的に実施していくために、企業の拡大成長とカーボンニュートラルが同時に実現することを目指すのですが、必要であれば、こうした取り組みを推進する専門の部署を組織化し、企業文化にまで昇華していくことが求められます。
ここまで「脱炭素計画」策定の第1ステップとなる教育・研修・人材育成計画の「目的」「方法」「成果」を見てきました。先にも触れましたが、企業が「脱炭素計画」策定をする方法、手順は概ね決まっています。それは、以下のような6つのステップで取組むことなのです。
次回以降、このステップ2「排出量算出・見える化」から詳しく解説していきます。
執筆者
鷹羽 毅(たかは たけし)
略歴:神戸大学 教育学部 卒業。株式会社富士経済で環境やエネルギー、マーケティングなど長年産業調査アナリストとして各種調査に携わる
専門分野:市場調査、業界リサーチ分析、各種マーケティング戦略検討、カーボンニュートラルや低・脱炭素経営計画、事業開発のコンサルティングなど
専門業種:環境・エネルギー、エレクトロニクス、機械、素材等各種製造業やサービス業まで幅広に対応
資格:中小企業基盤整備機構 中小企業アドバイザー、商工会議所専門相談員、産業調査アナリスト、マーケティングプランナー
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