6ステップで進める「脱炭素計画」
企業のカーボンニュートラル、低・脱炭素計画実現には6ステップの実行計画策定が必要になります。
それはこれまで各段階ごとにご説明してきた以下のようなステップです。
- 【ステップ1】教育・研修・人材育成
- 【ステップ2】排出量算出・見える化
- 【ステップ3】燃料転換・電動化
- 【ステップ4】省エネ・節電推進
- 【ステップ5】再エネ電力導入
- 【ステップ6】制度活用・認証取得
それぞれの段階で計画を立てて、順次実践していくことにより企業活動のカーボンニュートラル実現に近づくことができ、結果として企業経営においてさまざまなメリットをもたらし、業績拡大や企業価値を高めることにつながっていきます。
そして今回のコラムは「脱炭素計画」の最後の第6ステップ、制度活用・認証取得について解説していきます。
「オフセット」という削減対策について
自社ではなく他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等を「クレジット」の形で購入することで埋め合わせ(オフセット)をすることができます。これがカーボンオフセットという方法です。化石燃料の使用が残った場合や100%再エネ化が実現しなかった場合にその補完方法として活用できる制度です。
すべて自社内で削減できなくても排出量の削減が埋め合わせができ、全体の排出削減には貢献できる制度になっているのです。この仕組みを有効に活用することが、カーボンニュートラル実現に向けた大きなポイントになります。
それでは、脱炭素計画において最後の【ステップ6】「制度活用・認証取得」をどのように進めて行くのか見ていきます。
【第6ステップ】制度活用・認証取得
脱炭素計画の第6ステップでは、第5ステップの再生可能エネルギー電力導入では排出ゼロを実現できなかった場合、即ち化石燃料の使用が残った場合や100%再エネ化が実現しなかった場合にその補完方法としてカーボンオフセットなどの制度を活用することと、脱炭素計画に対する認証による評価を有効に活用することを考えます。
補完方法として検討するのが「オフセット」という考え方による排出量クレジット制度の活用です。概要としては他の企業が脱炭素活動で削減できた排出量を「クレジット」の形で購入して自社の削減実績として活用できる手法です。自社の対策で削減できなかった排出量分を購入して、実質的な排出量ゼロを実現することが認められている取引方法になります。
さらに今回のステップでは脱炭素計画により進めてきた成果を第三者が認証し評価することで外部に有効にアピールできる認証取得という方法も考えます。せっかくの企業努力と達成実績を形に残しアピールすることが脱炭素計画において最後に必要な戦略になります。
3つの目的
目的① カーボンニュートラル実現のための有効な制度・支援活用
企業の脱炭素・カーボンニュートラルを実現するために、削減実績とみなされる制度の活用と全体を通じて活用できる支援のしくみや補助金などの活用が考えられます。脱炭素計画の最終目的である温室効果ガスの排出ゼロ化に対して、これまで5つのステップで計画を見てきましたが、最後に残されたのがゼロ化への最終手段とゼロ化実現の価値を徹底的に有効活用する方法ということになります。先の再エネ電力導入でも100%実現できなかった場合に残された排出量を削減する方法が「Jクレジット」の活用による排出権の取引になります。
目的② 認証取得による成果の確認と外部評価の取得
2番目の目的としては、脱炭素計画の実践による成果を確実なものとするために、外部認証機関による第三者認証を取得してその価値を高めることになります。脱炭素計画の作成と実践はなかなか評価されにくく、その実際を評価することが困難でもあります。つまり、脱炭素計画の妥当性・実現性を客観的に評価できることが求められているのです。そのために、現状最も導入が進んでいるのがSBT(Science Based Target:科学にもとづいた削減目標)認証という認証制度です。
目的③ 脱炭素経営の完成と対策インセンティブの収益拡大
もう一つの目的は、脱炭素計画作成と実践のためのクレジットの活用と認証取得による対策インセンティブによる収益拡大を実現することになります。クレジットの活用で脱炭素・カーボンニュートラルが実現し、自社の実績を活かしたクレジットの創出・販売により直接収益拡大になります。そして認証取得により、客観的な企業評価により間接的に事業拡大を期待することができます。
次に具体的にどのような方法で制度活用・認証取得を進めていくことができるのかについて、これには以下の具体的な3つの方法があります。
3つの方法
方法① クレジット制度の活用で自社の排出ゼロ化を進める
どうしても削減しきれなかった残された排出量をゼロにするために、クレジットの購入により相殺(オフセット)する方法になります。日本で制度化されているクレジットの一つは「Jクレジット」制度で、具体的には「Jクレジット」制度のWEB上で販売されている排出量クレジットを購入して自らの排出量削減に充当することになります。どれだけの排出量削減が必要かにより購入するクレジットを選択することになります。
方法② SBT認証への申請・取得により計画を明確化する
脱炭素計画実践の最後にその計画作成と実績を客観的に評価してもらうために外部機関における認証取得という有効な手段があります。現状最も一般的に広く評価されているのがSBT認証という方法になります。今回はこの詳細は省きますが、基本的には国際的な枠組みであるパリ協定が求める水準と整合した5~10年先を目標にした企業の削減目標を考えてその実践計画の提出で取得することができるという制度になってます。
即ち、世界が進めるパリ協定に基づいた科学的根拠に基づく計画を自社でも立てていることの公表で認証されるというもので、先ずはしっかりと考えて、計画を立てていることの意思表示が必要だということです。また特に中小企業においてはその必要内容が簡易化されて認証されやすくなっている制度でもあります。
方法③ 自社のクレジット創出で新たな収益創出を検討する
最後に通り組むべき有効で価値ある方法が、①の方法であるクレジットについて、クレジットを購入活用するのではなく、自社の削減実績からクレジットを創り出して販売することを進める方法になります。即ちクレジット販売により収益拡大を計画する方法です。
そのためにはクレジットを創出するための排出量削減の実績を創り出すことが必要になりますが、これまでの脱炭素計画作成プロセスが排出量削減そのものでありそれを有効に活用することができるわけです。
特に有効なのが太陽光発電などの導入による排出量削減方法で、これはクレジット制度において認められており、導入による有効活用になります。その他省エネ方法や森林による排出削減などが対象となっています。
最後に制度活用・認証取得により得られる成果について確認してみましょう。
3つの成果
成果① クレジット活用によりカーボンニュートラルを実現
本プロセスのクレジット活用の最大メリットが残された排出量をオフセットできるところにあります。形としては自社の削減不足分を金銭により購入することで、また他社による削減分を活用することにはなるのですが、購入の支払いは他社の削減努力に対する報酬であり、また地球上の総削減量には貢献していることに変わりはないシステムになります。自社としては購入費用は計画実現経費であり、さらにはその後の価値拡大への投資となります。
企業のカーボンニュートラル実現で企業収益が拡大し、他社の実現にも支援し、地域・国、そして世界の脱炭素計画実現に寄与することになります。ひいては、グリーン・トランスフォーメーション、いわゆるGXの実現に結びついていくのです。
成果② SBT認証申請・取得により計画が評価され、企業評価が上がる
自社の脱炭素の推進は必ずしも自社の販売実績に直接貢献するものではなく、規制として取り組まなければならない計画でもあります。そのため取り組むメリットをより明確にするためには計画作成や実践を公表・評価されることが極めて重要となるのです。真剣に取り組み、その実績に対する客観的な評価と、その広報宣伝が重要な役割を果たします。
計画作成による取り組みへの積極性・真剣度を表す指標となるのが科学にもとづいた削減も區豐を立てて認証してもらうSBT認証なのです。特に日本ではこのSBT認証の申請企業数が増加傾向にあり、すした動きから出遅れることがないようにすることが必要となるのです。
成果③ 削減成果のクレジット創出により対策収益を上げることができる
第3の成果として脱炭素計画に新たな価値を創出するカーボンクレジットの創出です。
クレジットの購入は脱炭素計画を実現させることにつながりますが、クレジットの創出は実現実績の付加価値を有効に活用することができるものです。クレジットの創出・販売で得られた収益が脱炭素化の完成やクレジット購入資金とすることも可能になります。脱炭素計画実現のインセンティブ(ご褒美)となるわけで、これも自社事業がカーボンクレジットを創出できるようになれば、具体的なグリーン・トランスフォーメーションの実現という事にもなるのです。
以上により「脱炭素計画」の第6ステップとなる制度活用・認証取得を有効に進めることが期待されます。
ここまで「脱炭素計画」策定の最終ステップとなる制度活用・認証取得の「目的」「方法」「成果」を見てきました。
また、企業が「脱炭素計画」策定をする方法、手順は概ね以下のように決まっています。
本コラムで「脱炭素計画」策定の6ステップまでの説明は終わりです。
環境経営の基本知識としてご理解いただき、計画作成のご参考になりましたら幸いでございます。
執筆者
鷹羽 毅(たかは たけし)
略歴:神戸大学 教育学部 卒業。株式会社富士経済で環境やエネルギー、マーケティングなど長年産業調査アナリストとして各種調査に携わる
専門分野:市場調査、業界リサーチ分析、各種マーケティング戦略検討、カーボンニュートラルや低・脱炭素経営計画、事業開発のコンサルティングなど
専門業種:環境・エネルギー、エレクトロニクス、機械、素材等各種製造業やサービス業まで幅広に対応
資格:中小企業基盤整備機構 中小企業アドバイザー、商工会議所専門相談員、産業調査アナリスト、マーケティングプランナー
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