6ステップで進める「脱炭素計画」

企業のカーボンニュートラル、低・脱炭素計画実現には6ステップの実行計画策定が必要となるとされています。
それは以下のようなステップです。

 

 

それぞれの段階で計画を立てて、順次実践していくことにより企業活動のカーボンニュートラル実現に近づくことができ、結果として企業経営においてさまざまなメリットをもたらし、業績拡大や企業価値を高めることにつながっていきます。
そして今回のコラムは「脱炭素計画」の第5ステップ、再エネ電力導入について解説していきます。



「再生可能エネルギー」とは何か

再生可能エネルギーについて、実は法律で定められた定義があることをご存知でしょうか。

「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(エネルギー供給構造高度化法)」で、その定義は『太陽光、風力、その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの』となっており、政令において、『太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他の自然界に存する熱・バイオマス』が定められています。
簡単には資源が枯渇せず繰り返し使え、発電時や熱利用時に地球温暖化の原因となる二酸化炭素をほとんど排出しない優れたエネルギーだといえます。

 

 


それでは、脱炭素計画において「再エネ電力導入」をどのように進めて行くのか見ていきます。

【第5ステップ】再エネ電力導入

 計画の第5ステップでは脱炭素計画の最終段階として温室効果ガスゼロ化を可能にする再生可能エネルギーによる発電電力の導入計画になります。使用設備の電動化を進め、その電力を省エネ・節電することにより少なくし、いよいよ再エネ電力を導入する段階を迎えることになります。再生可能エネルギーは温室効果ガス発生ゼロの機能を持ち、脱炭素経営のキーポイントとなる再生可能エネルギー電力の導入は、この圧炭素経営計画の最終段階といえると思います。
 また実際の導入方法も、電力会社等が提供する再エネ電力を購入する方法と自社で再生可能エネルギー電力の発電システムを設置する場合の大きく2つの方法が対象になってきます。

先ずはその計画には重要な3つの目的があります。 

 

3つの目的

目的① 温室効果ガス発生ゼロの電力使用で脱炭素計画実現

 温室効果ガス発生要因は石油・石炭・天然ガス等の化石燃料の直接燃焼による発生、および電力使用による間接的な要因が主な発生源でした。そこで化石燃料の直接使用を極力削減し、各種設備を電動化して省エネ・節電することにより電力消費量を最小化することで対策プロセスが進んできました。
 そして最終的に削減した電力消費を再生可能エネルギーによる発電電力に置き換えることができればほぼ温室効果ガスのランニングでのゼロ化を実現することができる計画になります。
 残された化石燃料使用の対策と同時に再生可能エネルギーによる発電電力の活用が最後の切り札になります。

 

目的② 自家発電設備による自家消費・売電対応の計画検討

 2番目の目的としては、太陽光発電などの自家発電設備を設置して発電した電力をそのまま自社で使用すること以外に、電力会社へ売電することによる収益を得ることができるという事です。再生可能エネルギーによる発電電力を自社でそのまま消費して排出ゼロ電力の活用を実現するのか、その再エネ電力を売電して収益を得るのかが計画上の検討ポイントにもなります。

 

目的③ 電力消費・使用環境や事業性・経済性に応じた再生可能エネルギーの選択

 最後の目的は、再生可能エネルギー源の種類や規模、運用方法の選択になります。 現状一般的には太陽光発電システムの導入が最も多く見られ、性能・コスト的にも評価されています。その他の再生可能エネルギーの種類には風力やバイオマスが注目されていますが、風力は大型の電力事業のための発電設備となり、バイオマスも燃料となるバイオ資源の調達・配送などの課題が挙げられています。特にバイオマス発電は資源となる木材チップなどの関連事業を展開している場合などは、有効に活用することができるかもしれません。

 次に具体的にどのような方法で再生可能エネルギー電力の導入を進めて行くことができるのか具体的には以下のような3つの方法があります。

 

3つの方法

方法① 自社で太陽光・バイオマスなどの自家発電設備導入

 まず最初に再生可能エネルギーの設備を自社事業所内や保有土地・関連施設等に直接設置してそのまま電力を使用する方法が挙げられます。再生可能エネルギーの種類では太陽光、バイオマス、風力などがありますが、個別企業においては設置・運用方法やコスト面で太陽光発電が中心になります。

 太陽光発電パネルの設置場所としては、工場・ビルの屋根や屋上を有効に活用して設置するケースが多く、他には所有する土地・遊休地へ太陽光発電を設置することも考えられます。さらに特徴的なのが設備主体について、自社で設備を購入・設置して発電する場合の他に、別の事業者が発電設備を設置して発電した電力を購入するケースが想定されます。後者の方法については方法③において解説いたします。

 

方法② 電力会社の再エネ電力メニューの購入

 2番目の方法として、電力会社から再生可能エネルギーによる発電電力を購入するという方法があります。通常の電力会社からの電気では、主に火力発電による電力が中心のために間接的にCO2を排出していることになります。少し割高になるのですが、電力会社の電力メニューの中から再エネ発電電力メニューを選択することができ、それにより購入電力が再エネ電力として排出ゼロを実現することができるわけです。

 

方法③ 第三者発電事業者による発電電力購入

 最後に残された方法が最近の新たな対策として注目されている方法で自社とは別の事業者が発電設備を設置してその電力を購入する方法になります。太陽光発電設備などを自社に設置ことは①の方法と同じですが、その時の最初の設置やその後の運用管理を別の事業者がすべて行い、太陽光発電による発電電力を直接購入する契約形態になります。事業者にとっては、特に最初の設置費用が不要となり、その後の運用管理に手間がかからないメリットがあります。

再生可能エネルギー導入の新たなビジネスモデルとして注目されている方法で、自社敷地内に再エネ発電設備を第三者が設置するオンサイトPPA(Power Purchase Agreement:電力販売計画)と、他の場所で発電した再エネ電気を送電して利用するオフサイトPPAという形態があります。

両方とも、自社にとってイニシャルコストが必要ないとか、設備管理の手間も不要という事で最近多くの例で実現しています。

 

最後に再エネ電力導入により得られる成果について確認してみましょう。

 

3つの成果

成果① 温室効果ガス排出ゼロが実現できる

 本プロセスの最大特徴になるのがGHG排出量をゼロにすることができるところです。 使用エネルギーが電力だけになり、その電力がすべて再生可能エネルギーで供給されることにより、事業所・企業における温室効果ガス排出ゼロを実現することができるということになります。これにより対外的に環境価値を立証し、企業価値を高めることができ大きなメリットとなるのです。

 

成果② 発電事業者としての新たな収益事業展開も可能になる

 2番目の成果は、自社で発電設備を保有し発電電力を売電(電力会社に購入してもらう)することによりその収益を得ることができることになります。再エネ電力の利用だけではなく発電事業者になって電力料金を得ることができる新たな収益モデルの創出という事になります。
 自社への再エネ電力導入と同時に電力小売り事業という新規事業の展開です。自社の脱炭素計画実現と同様に、他社においても再生可能エネルギーによる電力需要は今後ますます高まることが予想され、事業の成長性は大いに期待されます。

 

成果③ 再エネ設備・電力導入による排出ゼロ化と企業価値向上につながる

 第3の成果としては①における成果として実現した、事業における温室効果ガス排出ゼロの成果が、企業としての環境経営への取り組みが評価されて有効な経営戦略となり、さらに業界大手企業や金融・投資機関などにおける企業価値の評価が高まり、今後の経営・事業におけるメリットが大いに期待できる点になります。
 温室効果ガス排出ゼロにおけるものづくりやサービス提供が商品・事業価値を高め、さらに今後はそれが必須条件・あたりまえとなることが予想されるため、今後こうした動きが脱炭素経営やGXの取り組みとして注目されていくと考えられるのです。

 

ここまで「脱炭素計画」策定の第5ステップとなる再エネ電力導入の「目的」「方法」「成果」を見てきました。

繰り返しになりますが、企業が「脱炭素計画」策定をする方法、手順は概ね以下のように決まっています。

 

 

次のコラムでは最終ステップ【ステップ6】「制度活用・認証取得」に関して詳しく解説していきます。

 

執筆者

鷹羽 毅(たかは たけし)

略歴:神戸大学 教育学部 卒業。株式会社富士経済で環境やエネルギー、マーケティングなど長年産業調査アナリストとして各種調査に携わる

専門分野:市場調査、業界リサーチ分析、各種マーケティング戦略検討、カーボンニュートラルや低・脱炭素経営計画、事業開発のコンサルティングなど

専門業種:環境・エネルギー、エレクトロニクス、機械、素材等各種製造業やサービス業まで幅広に対応

資格:中小企業基盤整備機構 中小企業アドバイザー、商工会議所専門相談員、産業調査アナリスト、マーケティングプランナー

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